英語音声学のページ(閉鎖予定)から読書案内
So-netが2021年1月限りでU-Page+(Webサイト公開サービス)を終了するとアナウンスしました。僕はここに1998年に「英語音声学のページ」を設置・運営してきましたが、これにより同サイトも閉鎖となります。
しっかり運営しているのなら、どこか他に移転することも考えられるのですが、更新などの管理がブログなどに比べると格段に面倒なこともあって、近年はほとんど更新を怠っていたのが実情で、恐らく唯一の見るべき内容だった読書案内も内容が古いまま放置してしまいました(最終更新は何と今から6年も前の2014年です)。
そんな状況なので、So-netのサービス終了を待たずに同サイトを閉鎖することも考えています。今回のエントリではそのための準備として、読書案内を現状のまま再掲します。内容の改訂が必要なのは明らか(中には推薦を取り下げたい本もあるほど)なのですが、今のまま同サイトを閉鎖してしまうと、怠惰な僕は今後、新たに改訂版を公開しなければという義務感が薄れてしまう恐れがあるため、敢えて古いままの内容を晒そうというわけです。
そのことを留意の上、ご利用頂ければと思います。
発音を自分で練習するための教材。
6ページに凝縮した簡潔な「発音解説」がアメリカ音・イギリス音を分けて同梱の音声CDに収録されている。初心者が英語発音の全貌を把握し練習するのに最適。
音声CD付き。アメリカ発音を主、イギリス発音を従とした解説と録音になっている。つづり字の読み方と併せて、個々の音からイントネーションまで整然と解説している。『ライトハウス英和辞典』(研究社)の付録「ライトハウス英和辞典つづり字と発音解説」をそのまま分売したもので、安価な点では他の追従を許さない。
付属の音声教材はないが、書いてあることをよく理解して実行することにより発音の上達が図れる。
Windows対応のCD-ROMによる訓練をするCDブック。説明はほとんどない。説明が必要なら 山田恒夫・足立隆弘『英語リスニング科学的上達法』『英語スピーキング科学的上達法』(講談社ブルーバックス)をそれぞれ併せて読む必要がある。
教室内で教師の指導のもとに使うための教科書。独りで読むということを前提にした書き方になっていないので、自習用として使うのはやや難しい。
音声CD付き。日本語の発音を出発点に音声学の概念を学んでから英語に入るという工夫で敷居を低くしようと試みた本。アメリカ発音に絞った解説の後、イギリス発音は1章で簡潔にまとめて扱う。一人で読んで理解し練習もできることを目指しているが、どこまで実現できているかは読者との相性によるだろう。
音声CD付き。アメリカ・イギリスの両方の標準的発音を並行して取り扱っている。
元来の目的は、英語の発音を踏み台にして他言語を学習する時の発音学習に生かそうということだが、内容的には日本語を踏み台にした英語発音の解説・練習が大部分を占める。音声は著者のWebサイトで提供されている。
CD別売。アメリカ発音とイギリス発音は並行して扱われている。単音に関しては丹念にかみ砕いた説明が見られるが、アクセント・イントネーションに関しては割かれた紙数が少なく、手薄なのが残念。
mp3音声ファイルを収録したCD-ROM付き(使用にはPCが必須)。イギリス発音を主、アメリカ発音を従とした解説と録音になっている(イギリス発音は著者自身によるやや古風なもの)。イントネーションの解説が非常に(過剰とも思えるほど)詳しい。
音声CD同梱。アメリカの標準的発音のみが対象。
音声CD付き。音韻理論への導きになるような解説が随所に見られるのが特徴か。
原著第2版の翻訳で、イギリスの標準的発音のみが対象。理論と発音訓練の両方をターゲットにしているところが特徴。原著は2009年に第4版を刊行、音声CDは付属になった。 英文も難しくはないので、できれば原書で取り組みたい。著者名とタイトルは Peter Roach, English Phonetics and Phonology (Cambridge University Press)。
英語音声学を学ぶに際して、自分の使う日本語の音声がどのようなものなのかを理解していると、勘所がどこにあるのかがはっきりし、学習の効率も上がる。英語音声学の教科書の中にはこの点に配慮したものもあるが、その場その場での説明になりがちで、なかなか体系的な理解に達することは難しいので、日本語音声学としてまとめて学ぶ方が近道である。
日本語にせよ英語にせよ人間の音声能力のほんの一部しか使っていない。一般音声学によって人間がどのような音声を発しうるかということを体系的に学ぶことにより、日本語や英語の発音を相対化して理解を深めることができるので、一通りの英語音声学の学習が済んだら是非学ぶことを薦める。
日本語を中心にした説明になっているので、比較的読みやすい。
カセットテープ別売。
定番の教科書である原著第3版の翻訳。当然ながら英語を出発点にして説明しているが、英語の音声について一通り説明した後に厳密な一般音声学の枠組を扱っているため、敷居の低い本になっている。 ※ 原著者 Peter Ladefoged の死去を受けて、原著第6版は Keith Johnson による改訂となった。 A Course in Phonetics, 6th ed. (2010年、Cengage Learning)。付属のマルチメディアCD-ROMを駆使しており、翻訳版とは別の本になったと考えるのが妥当。
定番の教科書その2の翻訳。調音音声学の枠組に従って厳密に組み立てられた章立てになっているため、やや取っつきにくい面もあるが、原理原則を直接学びたい人にお勧め。
英語の音声について一通りの知識を持つ人が、より詳細にわたる知識を得るために読む本。いきなり読むことは薦められない。
アメリカ発音を扱った本の中では最も薦められる。アクセント・イントネーションの基本を見た上で母音・語強勢・リズム・子音と続き、最後を再びイントネーションで締めくくるなど構成もよく考えられている。CD8枚付属で高価だがその価値は十分にある。
アメリカ発音を扱った本の中では最も緻密な記述が行われている。但し、練習が高度すぎてこなすのが困難に感じられるかも知れない。別売のカセットが高価かつ入手困難な点にも難がある。
アメリカ発音。個々の音については付録で簡単に済ませる一方、アクセント・イントネーションの練習は充実している。CD別売だが、入手困難になっていると思われる。
アメリカ発音。やはりアクセント・イントネーションの練習が主眼となっているが、単音の練習も本の中程で統合して扱われている。別売CDが非常に高価なのが難点。
CD同梱。イギリス発音。説明は非常に簡潔で、図のみの場合さえある。単語のリスト、あるいは短文を使って、付属CDの発音の真似をするという形式。単調ではあるが、発音に集中しやすいというメリットはあるだろう。
イギリス発音。説明が簡潔で分かりやすく、練習にも様々な工夫が凝らされている。会話練習的要素もあるなど、発音だけに留まらない部分をどう考えるかだが、現時点では最も薦められる教科書群。 テキストのみ、CD4枚付き、カセット4本付き、CD-ROMなどのフォーマットで販売されている。
イギリスの標準的発音の詳しい記述。比較的頻繁に改訂されており、現行版は2008年に出た第7版。なおテープ付きの補助教材として Joanne Kenworthy, A Companion to Gimson’s Pronunciation of English(Arnold) もある。
音声CD付き。イギリス発音を基本に置きながら、世界各地の英語発音、発音変化、などの幅広い話題を扱う。個別の話題について、他の文献からまとまった引用を読ませる付録がついているのが特徴的。
音声・データのハイブリッドCD付き。アメリカ発音に関して、理論と実践のバランスがいい本である。
世界各地の英語の発音を体系的に記述した3巻本。カセットテープ別売。
イギリスの伝統的な記述的枠組みに基づいて英語のイントネーションを記述・解説した本。付属CDと豊富な練習問題で、イギリスの標準的な英語のイントネーションの訓練が可能(但しCDは練習問題を全部カバーしているわけではない)。※2009年に邦訳『英語のイントネーション』(CD付属、研究社)が出たのでこれを利用することも可能。もっとも、このレベルであれば原書で取り組みたいもの。原書は非常に易しい英語で書かれている上に値段も翻訳より安い。
前半は専ら音響音声学的記述だけで話を進め、音声器官について触れるのは後半になってからという斬新な教科書。音声器官の記述から入る普通の音声学の教科書に取っつきにくさを感じている人にお勧め。音声合成・自動音声認識についての分かりやすい解説もある。マルチメディアCD-ROM付き。
100ページに満たないボリュームながら、一般音声学全般を手際よく説明している。但し、標準的なイギリス発音を出発点としているため、日本ではやや取っつきにくいかも知れない。
英語音声学の総本山であるロンドン大学のスタッフによる一般音声学概説書。音の実例などはWebサイトで対応している。
“英語音声学のページ(閉鎖予定)から読書案内”. への1件のコメント
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はじめまして、こんにちは。感謝だけのコメントです。
私はここ数ヶ月から英語学習をはじめた中年男性で、中高レベルの英文法復習はほどほどに進み、そろそろ発音も・・・という段階です。
竹林滋先生の”新装版 英語音声学入門”と”改訂新版 初級英語音声学”のいずれを買うか迷い、両者の違いをネット検索していた折、御サイト『改訂新版 初級英語音声学』レビューの記事を見つけ、さらに本ページに至りました。
こちらには自習書の紹介があり、思いがけず良い情報を得られ、ありがたく思っています。
(また前述書の違いも記載があり、いずれか1点に限るならば、米英を取り扱う「英語音声学入門」の方かなと所見を持ちました。)まずは竹林滋先生著書の前に、自習書紹介の冒頭3点ほどをまず入手して発音学習を開始しようと考えています。
ありがとうございます。いいねいいね
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